「駅馬車」

 昨日は温かかったので、久しぶりに街歩きを楽しみ、「海鮮丼」を戴きました。すると、ターミナル駅のところで臨時に設けられてDVDや本の売り場がにぎわっています。かかった曲が50年ぐらい前の映画の主題歌。家内ともども引きずられるようになだれ込み、懐かしい世界を楽しんで、手あたり次第面白そうな孫の絵本やDVDを買いあさりましたが、これだけ纏まって「懐かしの名曲集」「名場面」に出くわすことも少ないのと、価格が安いのとで買いすぎるぐらい買ってしまいました。それと言うのも先だって大きな本屋さんで、孫の誕生祝に本を買ってやろうと探しに出掛けたのですが、すっかり様相が違って、今では「アンデルセン童話」や「グリム童話」「桃太郎」も「一寸法師」も見当たりません。アンパンマンピカチュウばかりで、僕が子育ての頃買った「トムとジェリー」や「白雪姫」が見当たらないのです。そんな中、往年の名画が破格の値段で売られていて、「衝動買い」で何本も買ってしまった中に「駅馬車」がありました。

 「駅馬車」は西部劇の中では最右翼に挙げられるジョン・ウエインの名作で、59年前に大学受験の合格発表の後初めて自分で切符を買って見た映画です。当時はまだテレビも普及していなくて、もちろん白黒映画で字幕を読みながら、「西洋活劇」に酔いしれました。おかしかったのは僕の頭の中では「総天然色」での記憶しかなかったのですが、思えばあの頃はポスターだけ天然色で、実際はテレビ番組の「コンバット」も「ベンケーシー」もみんな白黒でした。今と違って、主役の名優は「銀幕のスター」と呼ばれ、「白黒写真」を「プロマイド」(本当はブロマイド)と言って売られていて、みんな憧れのスターの写真を手帳に挟んで自慢していた時代のことです。オードリー・ヘップパーンやイングリッド・バーグマンが活躍して、多くの日本人は小暮美千代や岸恵子の名演技に涙を流したものでした。

 さて、「あの感激をもう一度!」と勇躍家に帰って、「見たことのある映画をわざわざ買って・・・」と家内に馬鹿にされながら、青春時代に気持ちは帰って見始めました。アメリカと言う国は未だ240年しか歴史がありません。その初めごろは「西部開拓時代であり、東部13州しかなかった。その後「南北戦争」と言う「奴隷解放戦争」があって徐々に国のかたちが整えられていくのですが、未だに未完成で「禁酒法」を制定してみたり、「銃を規制しなかった」り、「金鉱乱掘」のアメリカンドリームがベースの「自由(何でもあり)社会」を築き上げ、今や世界一の侵略国になってしまった荒っぽい国です。その原型が「西部劇」であったわけですが、これが「移民社会のアメリカ」で、「アメリカン・スピリット」を形成するのに役立ったと言う評価がなされると思います。第二次大戦用に「ヤンキー魂」を方向付けるにはこれ以上の道具はなかったために、戦前を中心に「西部劇」は数多く作られ、その後「旅愁」や「ローマの休日」などの恋愛映画に移り変わっていったと思います。

 話の筋は「西部開拓」と言う名目でインデアンの棲み処である「西部地域」を侵略し、如何にしてアパッチを駆除して白人社会を拡大するかの時代に、「自分たちが侵略者でありながら、恰も被害者であるかのようなストーリー」で「西部開拓」を正当化して、先住民の権利を剥奪していくことが、「裸一貫で乗りこんできたアメリカ人の宿命」であるかのような描き方で展開していきます。こんな感覚で日本軍と戦ったわけで、「武士道」も「ハーグ陸戦条約」もあったものではありません。単なる「鬼退治感覚」ではなかったかと思います。

 映画産業そのものがその後大きく発展しましたので、「駅馬車」自体は今日的感覚から見ればすごく低レベルの作風ですが、俳優の演技や言葉のやり取り、さては間奏曲や全体の流れなどの組み立てには役者のみんなの息がピッタリで、エンディングに向けてハラハラする展開につなげていく鍵になるセリフなどしびれるような醍醐味が伝わってきます。それを色がない画面で「名場面を作り出す映画作りのメンバー」の気迫を感じました。今と違って一旦現像しなければどんな出来栄えになるかわからず、取り直すにもあの西部の大平原で撮影するわけで、今のようにセットで誤魔化すこともなかったわけで、製作者のご苦労は半端ではなかったと思います。

 それに引き換え現在は嘗ての名優が消えていくだけで、なかなか大物スターが現れないのは「粗製乱造」のせいか?「シン・ゴジラ」や「インディペンデンスデイ」のように「壮大な仮想の出来事」などが主流になり、「タイタニック」のような丁寧な作品が少なくなってしまったのじゃないだろうかと言う思いがします。文芸作品が「芥川賞」「直木賞」を乱発しても、なかなか「不朽の名作」が生まれてこなくなったのと同様、映画も「後世の語り継がれる名作」が最近ぐっと減ってしまったような気がして残念です。今日は昨日買ってきたもう一本「ガス燈」を見るのが今から楽しみです。

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